一般財団法人青少年国際交流推進センターは、イスラームへの理解を深め、より身近に感じられることを目的に「イスラームを知ろう!」と題するセミナーをこれまでに11回開催してきました。
12回目となる今回の「イスラームを知ろう!」では、日本で暮らす日本人ヤングムスリムの長谷川護氏をお迎えし、日本人ヤングムスリムの視点から、イスラームについてご自身の経験を織り交ぜながらのお話を聞き、マスジド大塚見学や炊き出し支援活動を、17名の参加者とともに行いました。
セミナー前半は、まずマスジド大塚/日本イスラーム文化センター事務局長クレイシ・ハールーン氏からマスジド大塚及び日本イスラーム文化センターで行っている活動について簡単に紹介いただきました。
クレイシさんはマスジド大塚の設立当初から携わっており、アフガニスタン難民に支援を届ける活動や、家庭に眠る食品を困っている人に届けるフードドライブなどを行っています。また、マスジド大塚設立当初は、日本ではイスラームに対して理解を持っている人が少なく、活動に対して理解を得るのが大変だったということもおっしゃっていて、当時遭遇された苦労や困難等は想像を絶するものであることがうかがえました。
続いてゲストスピーカーの長谷川さんから、イスラームに改宗するまでの経緯や現在の生活等についてご自身の行動を記録した動画を交えながらお話いただきました。
最も印象的だったのが、長谷川さんがインドネシアでホームステイをしていた時に、ムスリムの友人から「なんで私たちは生まれたんだと思う?」と質問をされた時のお話です。この問いについて話された時に、参加者の多くが驚きの表情を見せ、長谷川さん自身も「帰国してからも、この問いについて考えていた。」とおっしゃっていて、難しい質問ではないものの決まった答えがない奥深い質問であると実感しました。
また、改宗してからの現在の暮らしについては、日本で生活していく上で特別困ったことはないとおっしゃっていたのも驚きでした。ムスリムが少数派の日本で暮らすことは大変だと決めつけていたこと自体が、ある種間違った偏見であったのかと思わされました。
日本人ヤングムスリムの視点から、イスラーム・ムスリムの暮らしについて、お話を聞く機会は大変貴重であり、イスラームについて正しく理解する一助になったと実感しました。
セミナー後半は、マスジド大塚へ移動し、マスジド(モスク)見学を行いました。1階には女性用、2階には男性用の礼拝所があり、日本に暮らす様々な国の出身のムスリムがお祈りに訪れていて、日本で暮らすムスリムにとって、マスジド大塚が拠り所として重要な役割を果たしていることを目の当たりにしました。
マスジド見学を終了後、東池袋中央公園で行われている生活困窮者へ向けた炊き出し支援活動において配るビリヤニ(インド周辺国で食べられるイスラーム風炊き込みご飯)をパックに詰め込むボランティアを行いました。ボランティア作業を行いながら、ボランティアに参加されていた学生や東南アジアのムスリムの皆さんと交流を深めました。
ボランティア終了後は、本セミナーを通して学んだ感想を参加者内で共有をし、本セミナーを終了しました。
本セミナーを通して、イスラーム・ムスリムについて正しく、楽しく理解するきっかけになれば幸いです。次回の「イスラームを知ろう! 」へのご参加をお待ちしております。
<当日の参加者の声(実施後のアンケートより抜粋)>
- 自分とは異なる宗教を知る機会になりました。大塚に住んでいるので、これを機に今後は気軽にマスジド大塚を訪れて、さらにマスジドに通う皆さんとコミュニティの繋がりを持ちたいです。
- イスラームというと豚やお酒がだめ、お祈りは1日5回、断食などは良く聞かれるがもう少し踏み込んだことや実践する人の実際の体験や気持ちを聞けたことで、ネットなどからでも知ることができる知識以上のことが知れて理解を深めることができました。
- イスラームの人とそうでない人が一緒に地域のために活動していることがわかって良かった。イスラームに対するイメージが変わった。
- イスラームについて理解を深めることができただけでなく、モスクでの活動を教えていただいたり参加させていただいたことで、地域の中でモスクやイスラームがどのような役割を持っているのかも知ることができました。また炊き出しに参加させていただいたことで、これからも活動に関わるきっかけをいただきました。単にイベントへ参加して終わりではなく今後に繋がっていくという点でもとても有意義な会でした。 とても素晴らしいイベントなので是非人数を増やしたり、いろんな方が参加できるようにまた実施してほしいと思いました。イスラームについて偏った(時に間違った)イメージを持っている人は多いと感じますし、食べ物をはじめとして日本の生活に制約が多いだろうなと思うので、多くの人がイスラームについて理解を深めることができれば学校や職場、地域でムスリムがより生活しやすくなることにつながると思います。 素敵なイベントに参加させていただき本当にありがとうございました。
- ホームレスへの炊き出し支援のボランティアに参加できて良かったです。 炊き出しはインターネット上でしか見たことがないので、自分の目で見ることで貧困やホームレス問題を身近に感じました。実際に公園に来た人々も自分が思ってるより多かったので驚きました。
- ずっと気になってはいましたが、なかなか一人でモスクに入るきっかけがなく、こういった素敵な取り組みをされている事も知らなかったので、知ることが出来てとても良かったです。
<主催> 一般財団法人青少年国際交流推進センター
<共催> 日本イスラーム文化センター マスジド大塚
<協力> 日本青年国際交流機構(IYEO)
<オープニング挨拶>
クレイシ・ハールーン(Haroon Qureshi)
日本イスラーム文化センター 事務局長
1966年生まれ。パキスタン・ラホール出身。1991年に留学生として来日し、日本語を学ぶために日本の大学に入学。その後、ITの学校を卒業。現在は貿易会社を経営する。日々の業務の傍ら、日本イスラーム文化センター事務局長を務め、豊島区にあるマスジド大塚(モスク)の運営や国内外での支援活動にも携わる。マスジド大塚には創立時から関わっている。
<スピーカー>
長谷川 護(はせがわ まもる)
慶應義塾大学総合政策学部4年。野中葉研究会ムスリム共生プロジェクト。
2000年生まれ。東京都出身。大学入学後にイスラームを学び始め、 2020年5月に秋葉原にあるモスクにて改宗。現在は、慶應義塾大学野中葉研究会「ムスリム共生プロジェクト」に所属し、マスジド大塚と連携した「フードドライブ」や、映像を用いて自身とイスラームの関わりを表現する活動を行なっている。
<モデレーター>
菅野 祐哉(かんの ゆうや)
現在、(一財)青少年国際交流推進センターにてシニア・プログラム・コーディネーターとして勤務。
2019年、(独)国際交流基金主催の「日本語パートナーズ」事業に参加、インドネシアの高校で日本語アシスタント教師として従事。その後、インドネシア政府によるダルマシスワ奨学金制度を獲得し、インドネシア留学を実現、インドネシア語と文化を学ぶ。インドネシアで感じたイスラームの人々の温かさや優しさを多くの人に感じてもらえる取り組みに挑戦中。
※ 過去のセミナーの開催報告は以下リンクからご覧ください。
◆第1回:イスラーム教を学ぼう!<入門編>(2020年11月1日開催)
◆第2回:イスラームを知ろう!~日本人ムスリムの生活をのぞいてみよう~(2020年12月20日開催)
◆第3回:イスラームを知ろう!「ハラールフードってなに? 〜専門家に聞くムスリムの食事とおもてなし〜」(2021年3月28日開催)
◆第4回:イスラームを知ろう!~ハラールフード料理教室(カプサ)~【オンライン】(2021年9月26日開催)
◆第5回:イスラームを知ろう!~ハラールフード料理教室(マクルーバ)~【オンライン&現地(東京都)】(2021年11月23日開催)
◆第6回:イスラームを知ろう!~日本人ムスリマが見つけた、心豊かな中東イスラーム社会の暮らし方~(2022年1月30日開催)
◆第7回:イスラームを知ろう!~ハラールフード料理教室(シシバラク、バクラワ)~【オンライン】(2022年2月23日開催)
◆第8回:イスラームを知ろう!~断食は“入り口”なだけ。人生をリセットする「ラマダーン」~【オンライン&現地(東京都)】 (2022年4月10日開催)
◆第9回:イスラームを知ろう! ~となりのムスリム:地域と生きるマスジド大塚「モスク見学/フードドライブ体験」~【現地(東京都)】(2022年7月23日開催)
◆第10回:イスラームを知ろう!~服装からみる中東・湾岸地域の女性~(2022年9月11日開催)
◆第11回:イスラームを知ろう!~トルコ料理教室(チーキョフテ)~(2023年6月25日開催)
_______________________________
問合せ先:一般財団法人青少年国際交流推進センター
TEL 03-3249-0767
Email i.seminar@centerye.org