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【開催報告】2022年4月10日(日)イスラームを知ろう!~断食は“入り口”なだけ。人生をリセットする「ラマダーン」~【オンライン参加&現地参加(東京都)】

 イスラーム暦(ヒジュラ暦)の第9月は「ラマダーン」と呼ばれ、2022年のラマダーンは4月初旬からの約1か月間です。このラマダーン期間中の2022年4月10日(日)に、一般財団法人青少年国際交流推進センターでは、「イスラームを知ろう!」の第8回目として、「イスラームを知ろう!~断食は“入り口”なだけ。人生をリセットする「ラマダーン」~」を、オンライン参加と現地参加のハイブリッドで開催しました。当日は、41名がオンライン参加、10名が現地参加(東京都)し、ラマダーンへの理解を深めました。

 セミナーの開会に当たり、Zoomの投票機能を使って、参加者の皆さんへ「ラマダーンを知っていますか?」と質問したところ、約2割の参加者が「「ラマダーン」は聞いたことがある」、約6割弱の参加者が「「ラマダーン」=「断食」だと思っていた」、約2割強の参加者が「「ラマダーン」をよく知っている」と答えました。
 参加者の半数以上が、ラマダーンと言えば、ムスリム(イスラーム教徒)の義務の一つ「断食(サウム)」を行い、「日の出から日没まで食事も水も一切口にできない」といった断食のイメージをお持ちでした。しかし、断食は“入り口”なだけで、実際は、 飲食や行動を慎んで、心身を浄め、自分の生きる方向を修正する、聖なる月となります。

 セミナーの前半は、イスラームに入信し、UAEアラブ首長国連邦で生活をしているハムダなおこさんから、断食(サウム)の目的や、ラマダーン期間中のムスリムの生活についてうかがいました。ラマダーンは、余剰財産を所有できた人が喜捨(ザカート)として財産の一部を神へ差し戻し、困窮者へ食事を与えたり、長らく音信不通だった人へ連絡をとることが奨励されたりなど、より一層他者のことを思う期間です。実際にどのように行動するか、しないかは、全て自分次第です。UAEでは、ラマダーン期間中は社会全体が 働く時間を柔軟に変更したり、娯楽施設や公園は閉鎖したり、国がラマダーンを過ごす人々にとって過ごしやすいよう環境を整えていて、一人ではなく皆でラマダーンを過ごすため辛いという気持ちはないそうです。一日の生活の具体的な様子や、断食を免除される条件とそれを補う埋め合わせについてなど、生活に結びついた話を通して、ムスリムがいかに自分の生き方を振り返り、人生の方向修正をする機会としているか、具体的に理解することができました。

 続けて、宗教法人日本ムスリム協会会長遠藤利夫さんから、日本におけるラマダーンの様子についてうかがいました。ラマダーンの開始・終了の日程は、新月の観測によって決定しますが、例年日本では新月が観測できず、日本から近いマレーシアの新月観測に則り日程を決め、悪天候などで新月観測ができなければラマダーンの開始・終了は1日遅れるそうです。日本では、ラマダーンでも仕事やレストラン・娯楽施設などの社会環境が変わらないので、ムスリムはそれぞれ自分で工夫してラマダーンを過ごしていることや、日本全国各地のムスリムコミュニティでのイフタール(日中の断食を終え最初に口にする食事)の様子など、たくさんの写真を交えて紹介しました。

 その後の質疑応答では、参加者からたくさんの質問が相次ぎ、時間内に全ての質問に答えることができないほど盛り上がりました。「日中の料理の際に味見もできないのか」という質問には「舌の上で味見はするが、飲み込まずに口から出して口をすすげば大丈夫」、「日中水分もとれずに脱水症状になったりしないか」という質問には「それも含めて困窮者のことを想像することが大切。死ぬ気でやる必要はなく、無理なら後からやり直せば大丈夫」など、参加者の疑問に分かりやすく回答しました。

 セミナー終了後には、現地参加の皆さんと、宗教法人日本ムスリム協会でのイフタール(日中の断食を終え最初に口にする食事)をご一緒しました。


参加者からの質問に答えるハムダなおこ氏(下)、遠藤利夫氏(上左)と、モデレーターの所司圭穂理氏(上右)
当日のオンライン参加者
当日の現地参加者とイフタール(日中の断食を終え最初に口にする食事)体験

<当日の参加者の声(実施後の参加者アンケートから抜粋)>
・ ラマダーンの意義や生活の様子についての詳しい説明から、イスラームは断食という大変な苦行を行う宗教だという認識が翻された。

・ イスラームについて文献で学ぶことはできるが、実際に人々がどのように実生活に宗教を適応しているのかを聴くことができて、役に立った。

・ ラマダーンは生き方を修正する機会、という言葉が印象的でした。

・ 断食は、ただ飲食を断つのではなく、貧しい人のことを考えたり自分の行いをリセットしたりすることだと学びました。

・ 日本の各地のイフタールの様子がわかり、日本にもたくさんのムスリムが暮らしているんだと興味深かったです。

<主催> 一般財団法人青少年国際交流推進センター
<共催> 宗教法人日本ムスリム協会
<協力> 日本青年国際交流機構(IYEO)

<ゲストスピーカー>
ハムダ なおこ(オンラインでUAEアラブ首長国連邦から参加)
日本UAE文化センター代表、作家、翻訳家、エッセイスト
学生時代は米国・メキシコに留学し、英国の科学調査探検隊オペレーションローリーに参加など、さまざまな国際交流団体に所属して活動する。
1987年 第14回「東南アジア青年の船」事業に日本参加青年として参加
1989年 早稲田大学文学部文芸科卒(卒業論文首席)
1990年 第2回「世界青年の船」事業に通訳として参加。そのときに出会ったUAE参加青年と結婚してUAEに移住。5人の子どもを育てる。
2008年~ 独力で日本UAE文化センターを創設し、地域社会に日本文化を、日本にアラブ文化を広める活動を始める。
2011年~ 東日本大震災を機に宗教法人日本ムスリム協会と協働して慈善活動を続けている。
2012年『祖母のはなし』で第8回文芸思潮エッセイ賞受賞。2013年『アラブからこんにちは』を出版。2015年『アラブからのメッセージ―私がUAEから届けた「3・11」への支援』で第3回潮アジア太平洋ノンフィクション賞を受賞。2016年『ようこそアラブへ』出版。2021年『アラブに自殺、イジメ、老後不安はない』出版。2003年『シャヒード、100の命―パレスチナで生きて死ぬこと』翻訳、2018年ドバイ首長の本を翻訳。2018年シャルジャ・世界ブックフェアに作家・翻訳家として参加。

遠藤 利夫(東京の会場から参加)
宗教法人日本ムスリム協会会長
1970年 拓殖大学商学部卒
1970年 サウディアラビア国立マディーナ・イスラーム大学留学(3年間)
1973年 (株)コマツに入社、在職中サウディアラビア・ジェッダ市に6年間駐在
2009年 (株)コマツを定年退職
2004~2012 年 拓殖大学イスラーム研究所シャリーア専門委員会委員
2012年 拓殖大学イスラーム研究所客員教授
2014・2015年度 農林水産省 輸出戦略実行委員会ハラール部会委員

<モデレーター>
所司 圭穂理(東京の会場から参加)
内閣府主催の青年国際交流事業に、2001年「世界青年の船」事業日本参加青年、2014年「国際青年育成交流」事業(ドミニカ共和国派遣団)副団長、2017年「東南アジア青年の船」事業日本ナショナル・リーダーとして参加。
大学卒業後、トルコで日本語教師アシスタントとしてイスタンブールに一時期滞在。通訳案内士として日本の魅力を発信していたので、ポストコロナのインバウンドの再来を心待ちにしている。

※ 過去のセミナーの開催報告は以下リンクからご覧ください。
◆第1回:イスラーム教を学ぼう!<入門編>(2020年11月1日開催)
◆第2回:イスラームを知ろう!~日本人ムスリムの生活をのぞいてみよう~(2020年12月20日開催)
◆第3回:イスラームを知ろう!「ハラールフードってなに? 〜専門家に聞くムスリムの食事とおもてなし〜」(2021年3月28日開催)
◆第4回:イスラームを知ろう!~ハラールフード料理教室(カプサ)~【オンライン】(2021年9月26日開催)
◆第5回:イスラームを知ろう!~ハラールフード料理教室(マクルーバ)~【オンライン&現地(東京都)】(2021年11月23日開催)
◆第6回:イスラームを知ろう!~日本人ムスリマが見つけた、心豊かな中東イスラーム社会の暮らし方~(2022年1月30日開催)
◆第7回:イスラームを知ろう!~ハラールフード料理教室(シシバラク、バクラワ)~【オンライン】(2022年2月23日開催)

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問合せ先:一般財団法人青少年国際交流推進センター
TEL  03-3249-0767
Email  i.seminar@centerye.org

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